2013年9月15日日曜日

保育者を記録しています。(高橋健介)

栃木県佐野市にある認定こども園あかみ幼稚園の先生方と「製作コーナーを基盤にした遊び保育の実践」について、共同で実践研究をおこなっています。今年度は4年目で、4歳児クラスが対象となっています。月に2、3回、あかみ幼稚園を訪問し、実践のビデオ記録やビデオカンファレンスによる聞き取りをさせていただいています。本日は、このクラスでの3回目の記録日です。

本研究のデータとなる記録は、ビデオを用いて収録しています。ここで重視していることは、保育者を中心に、なるべくクラスの幼児全体を視野にいれて(広角レンズを用いて)、撮影することです。

一方、これまでの保育実践研究では、その保育実践の当事者である担任保育者の言動を記録し、それを検討することは、とても少ないのが現状と言っていいと思います。幼児の言動を記録することが中心になっていると言っていいのではないでしょうか。小学校以上の授業実践研究では、教師の言動が記録される(もちろん子どもとともに)ことが多いのですが・・・・。

保育実践をつくりあげているのは幼児だけではなく、保育者の働きかけがとても大きいはずなのですが、保育実践研究において、保育者が記録されることが少ないのはなぜでしょうか。いくつかの要因が考えられます。

一つめに考えられることは、これまでの保育実践研究では、物的環境(モノ、道具、自然など)へのかかわりによる幼児の言動やその育ちに対する検討が重視されてきていることです。もちろん、このことを検討することはとても大切なことですが、物的環境にかかわる人的環境としての保育者、幼児への保育者の直接的な関与や間接的な関与(位置、まなざし、身体の向きなど)も重要な検討内容のはずです。

二つめは、記録における技術的な課題です。保育実践も、小学校以上の授業実践と同様に、集団を対象にしていることにはかわりませんが、学校での授業における教師の言動やそれに対する子ども達の反応、特に発言者は明確化されています。一方で、保育実践の遊び場面では、保育者および幼児達の言動は、極めて多種多様(多声的)であり、それを総合的に記録することが難しいのです。

三つめは、第三者(研究者)が保育者を記録することを了承してくださる園(保育者の方々)が、まだ少ないというこです。ビデオ記録では、保育者や幼児の言動を長い時間記録するので、保育の当事者である園側(保育者の方々)としては、保育者への負担など、様々な判断材料から困難となっているのです。

このような難しい状況においても、これからの保育実践研究では、保育者の援助行為の客観的な記録から検討されるべきと考えています。そうでなければ、もちろんそれも大事なことですが、援助行為のあり様は、保育者自身や第三者の印象などによって主観的に語られるものが中心になってしてしまうと思うからです。保育実践の援助理論は多様性、具体性を含みこんだより客観的な記録から、実証され、導き出された理論として構築されるべきではないでしょうか。

その意味で、保育者の実践をビデオで記録し、保育者とクラスの幼児達との相互作用のあり様を詳しく検討してみようと、英断し継続してくださっているあかみ幼稚園の園長先生をはじめ先生方には改めて感謝したいと思っています。それとともに、このような記録を用いた実践研究が、保育者(当事者)の日々の実践の改善につながり、さらに、遊び場面での援助行為のあり様が明らかされていくためにも、まだまだ課題はありますが、私自身が本研究を継続して取り組んでいかなければならないと改めて思っているところです。(先生方とも楽しんで探究できればと思っています。)

 

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