2013年10月11日金曜日

認定こども園母の会(浦和母の会幼稚園・たねの家保育園)への訪問 (高橋健介)

さいたま市の浦和区にある認定こども園母の会(浦和母の会幼稚園・たねの家保育園)を訪問してきました。このたびの訪問の目的は、11月上旬に2年生の幼稚園教育実習の事前指導をこの認定こども園母の会にておこなわせていただくため、その打ち合わせをさせていただきました。

東洋大学ライフデザイン学部子ども支援学専攻において、幼稚園教諭一種免許状を取得するための教育実習は、4年次に4週間おこなわれます。よって、本専攻の学生達は4年生になるまで幼稚園での経験はほとんどありません(保育所での実習はあります)。なかには、保育所出身のため、幼稚園での実習オリエンテーションまで、幼稚園に足を運んだことがない学生も数人いるといった状況です。そのようなことを認定こども園母の会のお二人の園長先生にお話していたら、それなら学生達(2年生)を園に連れて来て、この場で講義をしてみたらいかがですかと、とてもありがたいお言葉をいただきました。約100名の学生を園に連れていき、施設をお借りして講義をするのは恐縮だったのですが、学生達に幼稚園(認定こども園)をぜひ観てほしい、先生方のお話をぜひ聴いてほしいとの思いもあったので、先生方のご厚意に甘えて、本学の先生方と思い切ってこの場にて2コマの講義をさせていただくことにしました。何より、学生達にとって、保育現場の雰囲気を感じながら、母の会の先生方のお話を聴けることは、とても貴重な経験になるはずです。このような企画をご提案してくださったお二人の園長先生に心より深く感謝を申し上げます。

認定こども園母の会(浦和母の会幼稚園)は、その名にもあるように、これまでにも保護者や地域の方々と連携し、互いに支え合いながら運営されきた歴史のある幼稚園です。学生の実習等でたびたび訪問させていただくのですが、保育者の方々や、そして保護者の方々にも、ゆったりとしたあたたかい雰囲気が感じられます。子ども達もこのような環境のなかで、のびのびと好きな遊びに取り組んいます。園舎や園庭はそれほど広くはないのですが、むしろこの家庭的な環境もあってか、子ども同士が学年を越えて、子どもと保育者とが、お互いによく見合っている(見守られている)姿が見受けられます。子ども達は、こうした関係のもとで、安心し、時には刺激を受けて、積極的に遊びや活動ができるのではないでしょうか。

たねの家保育園は、この3月に新園舎が完成したのですが、その2階にある多目的室(ホール兼食堂)は、子ども、保育者、保護者、地域の方々、そして食事を作る方々が交流し、子ども達の豊かな生活を共に支える場となっており、これからの認定こども園として大きな可能性を感じられる場でもあります。

保育現場での2年生全体の実習事前指導は初めての試みになりますが、とても楽しみです。認定こども園母の会の先生方には、たいへんお世話になります!

なお、認定こども園母の会理事長(たねの家保育園長)の真﨑みよ子先生がご執筆された「幼保一体化施設の現状と今後の課題」(雑誌『保育の実践と研究』2013年9月号)に、本園の実践等が紹介されています。ぜひご覧ください。

帰りに、JR浦和駅近くのうらわ美術館で開催されている「えっ?『授業』の展覧会-図工・美術をまなび直す-」展を鑑賞してきました。各学校の斬新な図工、美術の教育実践は、どれも面白かったのですが、特に、香川県高松市で取り組まれている「芸術士のいる保育所」の実践と作品の展示がとても興味深かったです。一度高松に行って、その実践を観てみたいと以前から思っているのですが・・・・。

2013年10月10日木曜日

人形劇制作中! No.2 (高橋健介)

高橋健介ゼミ3年生(人形劇団にんじん畑)が11月2日(土)・3日(日)に開催される東洋大学朝霞キャンパスでの学園祭に向けて人形劇を制作しています。上演日(初演)が近づいてきましたので、急ピッチで制作活動がおこなわれています。(遅れ気味ですが・・・・)

上演される人形劇は、サトシン原作(絵:すがわらけいこ、アリス館)の「おれたちはパンダじゃない」です。人形劇の制作に際して、原作の使用をこころよくご承諾いただいたサトシン様をはじめ関係者の皆様に改めて感謝申し上げます。

人形劇にした際にも原作者の意図が伝わるよう学生達は、人形や脚本づくりに丁寧に取り組んでいます。この頃は、遅くまで大学に残り、作業に勤しむ姿が見受けられます。ただし、これから残りの3週間が本当の意味での勝負どころです。楽しく、そして良質な人形劇になるよう最後まで妥協せずに取り組んでほしいと思っています。

ちなみに「人形劇団にんじん畑」の名称は、大学のキャンパスがある埼玉県朝霞市にはとても多くの人参畑があるのですが、この地域に根付いていってほしいと願って、学生達が考え、つけさせていただきました。

人形劇にご関心のある方、ぜひ東洋大学朝霞キャンパスの学園祭にお越しいただけますようお願い申し上げます。

2013年10月3日木曜日

ワイヤレスマイク付きビデオを使った保育実践研究 (高橋健介)

認定こども園あかみ幼稚園(佐野市)の先生方と「製作コーナーを基盤にした遊び保育の実践」の共同研究をおこなっています。4年目の今年度は4歳児クラスが対象となっており、本日は4回目の観察(記録)日です。

本実践研究の観察記録には、ワイヤレスマイク付きビデオを使用しています。このワイヤレスマイク(SONY製、ECM-HW2)は、Bluetooth によって受信機の付いたビデオカメラに音声を飛ばし、カメラの映像とともにその音声を記録できます。ここでは、対象クラスの先生(担任保育者)の腕にこのワイヤレスマイクを付けさせていただいています(感謝です)。よって、本ビデオ記録での映像は保育者を中心になるべくクラスの幼児全体を視野に入れて収録し、音声については保育者の声を中心にその周辺の幼児の声を収録することになります。

このようなビデオ記録をとるようになった経緯は、これ以前の実践研究では、担任保育者のクラスの幼児全体(クラスの幼児個々)の見取りと援助の関係を探るため、担任保育者を中心になるべくクラスの幼児全体を視野に入れて(俯瞰して)、ビデオで記録していました。この方法では、クラス全体の幼児達を担任保育者がどう見取り、どのようなタイミングで援助をおこなっているのかを把握することが可能でした。しかし、俯瞰して撮影しているため、保育者の個々の幼児やある群れ に対する援助のやり取り(特に会話)を十分に記録できないという課題がありました。

一方、これまでのビデオを用いた保育実践研究では、ある幼児の行動に着目し、その幼児の保育者や他児へのかかわりをズームして記録することが中心となっていました。焦点化されたある幼児の言動については詳しく分析できるかもしれませんが、その幼児の周辺にいて、直接かかわっていない保育者や他児との関係(互いに見合っている、互いの位置・身体の向きなど)が記録され難いので、その関係性を読み取ることが困難でした。むしろ集団保育におけるある幼児の言動は、この関係性のあり様に大きく左右されていることが考えられます。

この様な私と共同研究者(あかみ幼稚園の先生方)との研究課題、これまでの保育実践研究の課題について思案していたところ、偶然このビデオカメラに装着できるワイヤレスマイクを見つけ、実際のビデオ記録に試してみました。(担任保育者にワイヤレスマイクを付けさせていただきました。)  実際におこなってみると、俯瞰して撮影しながらも、今まで聞き取り難かった保育者の言葉やその周辺の幼児達の言葉がとてもクリアに聞き取れ、さらに記録されます。保育者の言葉やそこでの会話がより聞き取れるようになったことで、保育者のクラスの幼児達それぞれへの見取りや援助の意図が以前よりも把握しやすくなったことは確かです。

このワイヤレスマイク付きビデオを用いた実践研究の成果は、今年5月に開催された日本保育学会第66回大会の口頭発表(「製作コーナーを基盤にした遊び保育の実践(1) -4歳児保育における同調的な遊びから目的志向的な遊びへの発展に向けた援助-」)で報告させていただきました。

今年度の実践研究においても、このワイアレスマイク付きビデオを使って保育実践の観察および記録をおこなっていますが、俯瞰性と焦点化を併せ持つこの記録機器によって、少しでも集団保育での保育者の援助行為の特質が明らかになればと思っています。

来年度の日本保育学会第67回大会では、「ワイヤレイスマイク付きビデオを用いた保育実践研究の意義とその可能性」と題し、自主シンポジウムを開催させていただく予定です。この機器を使って保育の場でフィールド研究をおこなっている方々にご提案いただき、この記録方法の可能性や課題について検討します。ご関心のある方は、ぜひお越しいただき、ご意見等をいただければと思っています。

また、次回の「第5回 ワイヤレスマイク・ビデオ研究会(仮称)」においても、私の今年度のビデオ記録をもとに発表させていただく予定です。ご関心のある方はぜひご参加ください。

第5回  ワイヤレスマイク・ビデオ研究会
日    時:2013年10月25日(金) 18:30~
場    所:日本女子大学目白キャンパス 新泉山館6階 請川研究室
発表者:高橋健介(東洋大学)
テーマ :「製作コーナーを基盤にした4歳児保育の実践 -個々の作り見立てから協同的な遊びに
      向けた援助-(仮)」
連絡先:高橋健介 takahashi_k@toyo.jp

 「天高く馬肥ゆる秋」 あかみ幼稚園の運動会はもうすぐです。
 

2013年9月24日火曜日

野外文化教育学会第14回大会(いわき大会) 高橋健介

野外文化教育学会第14回大会が、「東日本大震災を乗り越えて生きる子ども、学校、地域-Ⅱ」を大会テーマとして、福島県いわき市の「いわきゆったり館」を中心に2日間にわたっておこなわれました。主な内容は、フィールド視察、自由研究発表、大会テーマと同名のシンポジウムです。

私は、事務局としての仕事もあったのですが、自由研究発表で「大学生のフィールドワークにおけるブログによる当事者記録の試み -伊豆大島での野外生活体験学習(大島キャンプ)の実践より-」を発表させていただきました。

本研究は、当ブログサイトと各自の携帯電話を利用したフィールドワークでの当事者記録の可能性と課題を検討したものです。学生のフィールドワークをブログによって記録する試みは、まだ少ないと思われるのですが、記録の即時性、参加者同士の共有、参加者以外への伝達、そして記録機器(携帯電話)への親密性などを考慮して、実際の大島キャンプで試みてみました。詳細な分析までには至っていないのですが、学生の投稿記事から、いくつかのことが考えられました。

一つ目は、こちらの予測より、特に回数の面において、学生達は活発にブログ記事を投稿していなかったということです。キャンプ期間中の自由時間は、一人で携帯電話に向かうよりも、学生同士の直接的なコミュニケーション(おしゃべり、手遊びゲームなど)を求める傾向にあったのです。これについては、キャンプでの協同的な活動による効果かもしれないので、その意味では評価できることです。ただし、積極的に記録を残すという意味からは、今後工夫が必要かもしれません。

二つ目は、キャンプ期間中の投稿では、なかなかそれぞれの経験の意味を掘り下げて考えることが難しいということです。キャンプ終了後の投稿記事に、そのような内容が期間中よりも多くみられました。確かに、不慣れなキャンプ生活では、じっくり掘り下げて考える余裕などないのかもしれません。負担が大き過ぎない程度に、キャンプ中だけではなく、キャンプ後にも投稿する機会を設けるなどの取り組みが必要ということが考えられました。

その他にも、ブログへの投稿を意識して主体的な経験内容(地域の方々とのかかわり、街での散策など)がより充実したこと、学生は情報を発信するだけではなく、教員や他の学生の情報収集や共有にブログの効果があったことなどが考えられました。

一方、ブログへの投稿は、大島キャンプでの学生への課題ではありましたが、学生達は大島キャンプでの豊富な経験内容を振りかえって考えながら記述してくれたことも確かなことです。この記録は、今後このキャンプを改善していくための貴重な資料になっていくことは言うまでもありません。キャンプおよび初めての試みであったブログでの記録に前向きに取り組んでくれた学生達に改めて感謝したいと思っています。

学会では、発表時やその後にも様々なご意見をいただきました。この場にて感謝申し上げます。

また学会事務局として、本大会の運営にご協力いただいたいわき市やその他の皆様方にもお礼申し上げます。

沖縄 「よみたん自然学校」 研修 No.2


引き続き、高橋ゼミ4年の a.i です。

「よみたん自然学校」の子どもたちが様々遊びをする中で私が一番驚いたのは、年少児が子どもの身長よりも何倍も大きい3~4メートルの木をするすると登っていたことです。自分で登りやすいポイントを探し、手と足の指でしっかりと枝を掴んで上手に登っていました。登り方はスタッフが教えているのではなく、子どもが友達のやり方を真似したり子ども同士で教えあったりして自ら身に付けているそうです。

また、自然学校では子どもの遊びへの集中力が高いように感じられました。ぶんぶんごまと呼ばれる糸と段ボールで作られたこまを子どもが作り、自分で回していたのですが、なかなかうまく回すことができず、約2時間に渡って回す練習をしていたのです。できるようになるまでやるという子どもの集中力、やる気に驚かされました。

自然学校では子どもたちがのびのびと生活し、やりたい遊びをとことんやる姿が見られました。スタッフはさまざまな材料を揃えたり環境を整えたり、子どもの遊びが広がるように一人一人丁寧に関わり、子どもが遊びに集中できるような工夫が多くされていました。

保護者の方ともたくさんお話をさせていただきました。自然学校には沖縄県外から来たという方が多いそうです。自然学校へ通い始めてから、裸足で遊ぶことでできることが増えたなど、子どもの変化や子どもに対する保護者の思いをお聞きすることができ、色々な視点から自然学校のことを知ることができました。

スタッフの方からも自然学校のお話や、子どもと自然との関わり、どのような思いで子どもたちと関わっているのかなど、お話を聞くことができました。

一週間自然学校で研修させていただき、自然学校についてや、自然保育の重要性、子どもの気持ちに寄り添った関わり方など多くのことを学ぶことができました。自分がどんな保育をしたいのかが見え、子どもへの関わり方を改めて考えるきっかけとなりました。実際に自分の目で見たり現場の声を聞くことができ本当によかったです。

このような機会を与えてくれた高橋先生、自然学校のスタッフの方々に感謝します。

長文失礼しました。

2013年9月20日金曜日

沖縄 「よみたん自然学校」 研修 No.1

 
高橋ゼミ4年の a.i です。
 
9月8日から9月16日まで沖縄にある「よみたん自然学校」に卒論研究も兼ねて研修に行ってきました。自然学校では実際に保育の中に入らせてもらい子どもと関わったり、見学という形で子どもたちの様子、保育者の関わり方を見させてもらいました。

「よみたん自然学校」は、読谷村の観光施設の中に作られた認可外の幼稚園のようなところです。真ん中に砂場があり、それをかこむようにして園舎があります。その周りは自然にあふれ、綱や木で作られたブランコやハンモックなどの遊具がありました。室内にいても自然の中で過ごしている気持ちになるような雰囲気がありました。「よみたん自然学校」は、幼児の学校が21名、小学部10名、合わせて31名、そしてスタッフが7名という小規模の学校です。

子どもたちの活動は、朝自分のやりたいことを発表することから始まります。一日の流れは決まっておらず、積み木、水遊び、木登りなど自分の好きな遊びをするというのが自然学校の特徴です。観光施設内にお出掛けしたり、海に行くこともあります。スタッフは子どもがやりたいことを実現できるように環境設定をしたりして子どもと関わります。ここではスタッフと子ども、スタッフ同士があだ名で呼び合っていて、子どもが「先生」と呼ぶことがありません。またスタッフが素で子どもと関わっていて、スタッフと子どもの距離が近く、友達までは言い過ぎかもしれませんが対等な関係であり距離が近いような印象を受けました。私自身もあだ名で呼ばれ、それだけで子ともとの距離が近くなったように感じました。

2013年9月16日月曜日

富貴島幼稚園 創立60周年記念拡大園内研修会 (高橋健介)

千葉県市川市にある富貴島幼稚園の創立60周年記念拡大園内研修会に参加してきました。
 
富貴島幼稚園は、遊び中心の保育を展開する幼稚園で、特に製作コーナー等で作って見立てる遊びを大切にしています。その遊びとは、幼児自らがイメージし(考え)て、具体化する(モノ見立て、場見立て、イメージの共有)ことで展開されていきます。したがって、ここでの保育者の役割には、クラスの幼児全体(幼児それぞれ)の様子を丁寧に見取り、必要に応じて援助することが大切にされています。
 
創立60周年拡大園内研修会には地域の幼稚園の先生方、そして保育者養成校の先生方と、多くの方々が参加されていました。私は、この研修会で3歳児クラスの分科会『3歳児の製作素材、道具の選び方』の司会を担当させていただきました。分科会に参加する方々が、午前中の保育を観て、午後に話し合いがおこなわれました。
 
分科会では、参加者の方々から、「製作コーナーやままごとコーナーにいる保育者の存在感と子どもの安定」「保育者と子どもとが互いに見る-見られる関係(見合う関係)にある」「保育者がそれぞれの遊びをよく見て、それに応じたかかわりをしている」「製作コーナーにある素材と実際の子どもの遊び」など、まずはお気づきの点を話していただきました。
 
その後も、製作コーナーの素材や道具についての話題だけではなく、「居場所としての製作コーナー」「動作を共有する(同調する)場として製作コーナーとその素材」「保育者の遊びモデルの意味」「保育者と子どもの見合う関係」など、製作コーナーの機能やそこでの保育者の役割等について充実した話し合いをもつことができました。つたない司会ではありましたが、ご協力いただいたクラス担任の先生方、参加者の皆様にお礼申し上げます。
 
全体会では小川博久先生(東京学芸大学名誉教授)のご講演があるなど、有意義な時間を過ごすことができました。それにしても、小川先生の変わらぬ幼児教育、遊び保育への情熱と飽くなき探究心にはいつも驚かされます。
 
富貴島幼稚園の創立60周年に改めてお祝い申し上げますとともに、ますますのご発展を願っています。また、このような研修会(夜の交流会を含め)に参加させていただき、ありがとうございました。
 

2013年9月15日日曜日

保育者を記録しています。(高橋健介)

栃木県佐野市にある認定こども園あかみ幼稚園の先生方と「製作コーナーを基盤にした遊び保育の実践」について、共同で実践研究をおこなっています。今年度は4年目で、4歳児クラスが対象となっています。月に2、3回、あかみ幼稚園を訪問し、実践のビデオ記録やビデオカンファレンスによる聞き取りをさせていただいています。本日は、このクラスでの3回目の記録日です。

本研究のデータとなる記録は、ビデオを用いて収録しています。ここで重視していることは、保育者を中心に、なるべくクラスの幼児全体を視野にいれて(広角レンズを用いて)、撮影することです。

一方、これまでの保育実践研究では、その保育実践の当事者である担任保育者の言動を記録し、それを検討することは、とても少ないのが現状と言っていいと思います。幼児の言動を記録することが中心になっていると言っていいのではないでしょうか。小学校以上の授業実践研究では、教師の言動が記録される(もちろん子どもとともに)ことが多いのですが・・・・。

保育実践をつくりあげているのは幼児だけではなく、保育者の働きかけがとても大きいはずなのですが、保育実践研究において、保育者が記録されることが少ないのはなぜでしょうか。いくつかの要因が考えられます。

一つめに考えられることは、これまでの保育実践研究では、物的環境(モノ、道具、自然など)へのかかわりによる幼児の言動やその育ちに対する検討が重視されてきていることです。もちろん、このことを検討することはとても大切なことですが、物的環境にかかわる人的環境としての保育者、幼児への保育者の直接的な関与や間接的な関与(位置、まなざし、身体の向きなど)も重要な検討内容のはずです。

二つめは、記録における技術的な課題です。保育実践も、小学校以上の授業実践と同様に、集団を対象にしていることにはかわりませんが、学校での授業における教師の言動やそれに対する子ども達の反応、特に発言者は明確化されています。一方で、保育実践の遊び場面では、保育者および幼児達の言動は、極めて多種多様(多声的)であり、それを総合的に記録することが難しいのです。

三つめは、第三者(研究者)が保育者を記録することを了承してくださる園(保育者の方々)が、まだ少ないというこです。ビデオ記録では、保育者や幼児の言動を長い時間記録するので、保育の当事者である園側(保育者の方々)としては、保育者への負担など、様々な判断材料から困難となっているのです。

このような難しい状況においても、これからの保育実践研究では、保育者の援助行為の客観的な記録から検討されるべきと考えています。そうでなければ、もちろんそれも大事なことですが、援助行為のあり様は、保育者自身や第三者の印象などによって主観的に語られるものが中心になってしてしまうと思うからです。保育実践の援助理論は多様性、具体性を含みこんだより客観的な記録から、実証され、導き出された理論として構築されるべきではないでしょうか。

その意味で、保育者の実践をビデオで記録し、保育者とクラスの幼児達との相互作用のあり様を詳しく検討してみようと、英断し継続してくださっているあかみ幼稚園の園長先生をはじめ先生方には改めて感謝したいと思っています。それとともに、このような記録を用いた実践研究が、保育者(当事者)の日々の実践の改善につながり、さらに、遊び場面での援助行為のあり様が明らかされていくためにも、まだまだ課題はありますが、私自身が本研究を継続して取り組んでいかなければならないと改めて思っているところです。(先生方とも楽しんで探究できればと思っています。)

 

東立川幼稚園の見学 (高橋健介)

国立市にある東立川幼稚園に、共同研究でお世話になっているあかみ幼稚園の先生方、若手?の保育研究者の方々と見学にいってきました。
 
東立川幼稚園は、遊びを重視した保育を展開している幼稚園です。本日は、午前保育だったのですが、降園前の帰りの会まで、子ども達はめいいっぱいそれぞれの遊びをおこなっていました。特に園庭での遊びでは、子ども達が群れ、それぞれの年齢に応じて共同、協同して遊んでいる様子をみることができました。3歳児は、砂場などの場を共有しながら、それぞれがモノや素材にかかわりながら遊んでいます。お互いの動きに同調したり、遊びを真似しあいながら遊んでいる様子がわかります。4歳児は、保護者お手製のテーブルを並べたり、重ねたりしながら、自ら遊びの場をつくり(見立て)、ごっこ遊びをおこなっている姿をみることができました。5歳児は、多くの子ども達が集まって相談しながら、陣取りゲーム(開戦どんのような遊び)を協同して取り組んでいる姿があります。
 
以前にも書かせていただきましたが、現在、多くの幼稚園、保育所では園庭での群れ遊びが難しくなってきています。年齢に応じた群れでの遊びを展開することが難しくなってきているのです。特に、5歳児の鬼ごっこなど、協同的な遊びを主体的に展開することが難しくなってきていると感じています。このような遊びを展開できるようになっていくには、子ども自身の発達だけではなく、年齢に応じた保育者の働きかけがとても重要と思っています。
 
見学後の懇談会で、子ども達の群れ遊びへの働きかけについてうかがってみると、遊びへの援助だけではなく、日常生活での仲間との共同作業(畑や飼育などの仕事)、クラス(集まり)での対話を大切しているとうかがいました。帰りの会を見させていただいたのですが、ある子どもの飼育活動でおこった課題を、対話を通して、クラスのみんなで共有している姿がありました。改めて担任保育者と子ども達とのクラスでの豊かな生活が、仲間との充実した遊びにつながっていくことを考えることができました。
 
また、園庭の一角の昨年の5歳児達が作ったお店(小屋)で、ごっこ遊びをする子どもがいました。東立川幼稚園では、毎年、秋のある時期に、5歳児達が木材を使って作りたい小屋を作るとのことです。昨年に実習訪問をさせていただいた時には、木材で作った船(5、6人が入れる)がありました。これら子ども達が遊びに用いる小屋は、ある時期にたたんでしまうとのことです。なくなってしまったその場を見て、5歳児達が自分たちの小屋を作りたいと考えだし、新しい小屋を保育者に援助されながら作り上げるとのことです。5歳児らしい主体的な遊び(活動)が展開されていますが、保育者の計画や見通しが、さりげなく、しかもしっかりとそこにあることを教えてくれます。
 
見学、懇談会を通して、豊かな遊びが展開されるための保育者の役割や園生活について、充実した学びをすることができました。お忙しいなか、ご対応していただいた理事長先生、園長先生、そして東立川幼稚園の先生方に改めて感謝申し上げます。


2013年9月7日土曜日

「森のようちえん」見学の旅(2日目) 高橋健介

「森のようちえん」見学の旅、2日目です。本日は、新潟県上越市にある「森のようちえん てくてく」を訪問させていただきました。

NPO法人緑とくらしの学校が運営する「森のようちえん てくてく」は、毎日16名の幼児(3歳児~5歳児)が通う認可外の保育施設です。上越市の市街地から少し離れた山あいにある「てくてくの森」が主な活動場所です。今日も、5歳児達が小川に作っていたダム(カエルなどが住みついている?)が、昨晩の大雨でくずれかかっていたので、登園後すぐにスコップを持って自ら修理をしていました。2年半、この場で過ごしているので、この遊び(自然)環境をどう使いこなすのかを熟知しているようです。この後にでかけた畑までのいつもの散歩道でも積極的に環境に働きかけている子ども達の姿がありました。(途中の森にミョウガが群生していました。少しいただいてきました。)

「てくてく」では、週2回の昼食には、かまどや薪を使っておかずと汁物を作るとのことです。この日の昼食も、主に5歳児達が自らの役割として、積極的に野菜を切ったり、かまどでの作業をしていました。雨のあとの湿度の高い日でしたが、マッチでうまく点火することもできていました。日々の生活に必要とされることの積み重ねが、子ども達の生活力を高めてきていることをうかがい知ることができました。(私達も本日のスープとカボチャの煮物をいただきました。)

また、「てくてく」の保育は、保護者が参加し、協同して営まれていることも特徴です。今日も、数人の保護者の方が、この森の環境整備や食事づくりの下準備をしたり、時には子ども達にかかわりながら、子ども達の森での生活や遊びを見守っていました。昼食後にも、保護者の方が絵本の読み聞かせ(きれいな歌唱つき)をされていました。保育者をはじめ多くの大人達が森での生活を支えるていることで、子ども達が自然とのかかりを安心して楽しめていることがわかりました。

見学の最後にお礼として、東京から持ってきた「手づくり綿あめ器」を使って、子ども達に綿あめを作って食べていただきました。

「てくてく」の保育は、そのほとんどが外(森)での生活や遊びということで、既存の幼稚園や保育所とは違い、ある意味で不便な環境での生活かもしれません。ただし、保育者と保護者との連携、保護者の直接的および間接的な保育への参加によって、このような環境のなかでも、子ども達は豊かな自然にかかわり、工夫しながら楽しい生活をつくりあげることができるのではないでしょうか。新しい保育のスタイルとして、「森のようちえん」の可能性を感じさせていただきました。

このような見学の機会をいただき、「森のようちえん てくてく」の園長先生をはじめ保育者の方々、そして保護者の方々に改めて感謝申し上げます。

見学後は、上杉謙信の居城であった春日山城跡にもいってきました。

「森のようちえん」見学の旅(1日目) 高橋健介

「森のようちえん」を見学するため、1泊2日で長野県(長野市飯綱)と新潟県(上越市)へいってきました。

1日目の見学先は、長野市の飯綱高原にある「こどもの森幼稚園」です。この幼稚園を訪れるの2回目になります。

「こどもの森幼稚園」は、飯綱高原の森深くに位置する認可幼稚園です。動植物をはじめ飯綱高原の豊かな大自然に包まれた場所にあります。広い広い園庭には、自然環境やその地形を生かした手作り遊具もたくさんあり、子ども達が四季折々の自然を感じる、自然とかかわって遊ぶ、工夫して遊ぶには、とても魅力的な環境があります。

一方で、この見学を通して強く感じたのは、保育者の存在感です。環境(自然やモノ)にかかわる人的環境としての保育者の姿(遊びモデル)それぞれがとても魅力的なのです。子ども達は、環境にかかわる保育者の姿を見て、感じることで、自然へのかかわりを広げ、深めているのではないでしょうか。もちろん、子ども自らが自然環境に興味関心をもってかかわってもいますが、それとともに保育者の周辺で、保育者と子ども、子ども同志がお互いを見合っている姿が見受けられます。このような関係性をベースに、この自然環境のなかで子ども達は安心し、そして探索、探究して、それぞれの遊びに取り組んでいることが考えられます。

現在、多くの幼稚園や保育所で、園庭の遊びが難しくなってきていることが考えられます。室内と違い広々としているので、なかなか保育者と子ども、子ども同士の関係性が保てず、仲間とともに目的志向的に遊ぶことが難しくなっているのです。子ども自身の遊ぶ力が弱くなってきていることもその要因であります。園庭の環境は大きく違っていても、「こどもの森幼稚園」の先生方の環境(自然やモノ)への向きあい方には、園庭での保育者の援助、保育者と子どもの関係のあり方について多くの示唆を与えてくれます。

このような学びの機会を与えていただいた「こどもの森幼稚園」の園長先生をはじめ先生方には、改めて感謝申し上げます。

「こどもの森幼稚園」を創設された内田幸一先生には、来年の2月23日(日)に予定している保育研究集会(保育者養成における体験学習に関する研究集会、於日本女子大学)で、基調講演をお願いしています。ご関心のある方は、ぜひお越しいただけますようお願いします。詳細は、後日、本ブログでもお知らせします。

見学後は、戸隠そば、戸隠神社奥社も体験してきました。