2013年10月3日木曜日

ワイヤレスマイク付きビデオを使った保育実践研究 (高橋健介)

認定こども園あかみ幼稚園(佐野市)の先生方と「製作コーナーを基盤にした遊び保育の実践」の共同研究をおこなっています。4年目の今年度は4歳児クラスが対象となっており、本日は4回目の観察(記録)日です。

本実践研究の観察記録には、ワイヤレスマイク付きビデオを使用しています。このワイヤレスマイク(SONY製、ECM-HW2)は、Bluetooth によって受信機の付いたビデオカメラに音声を飛ばし、カメラの映像とともにその音声を記録できます。ここでは、対象クラスの先生(担任保育者)の腕にこのワイヤレスマイクを付けさせていただいています(感謝です)。よって、本ビデオ記録での映像は保育者を中心になるべくクラスの幼児全体を視野に入れて収録し、音声については保育者の声を中心にその周辺の幼児の声を収録することになります。

このようなビデオ記録をとるようになった経緯は、これ以前の実践研究では、担任保育者のクラスの幼児全体(クラスの幼児個々)の見取りと援助の関係を探るため、担任保育者を中心になるべくクラスの幼児全体を視野に入れて(俯瞰して)、ビデオで記録していました。この方法では、クラス全体の幼児達を担任保育者がどう見取り、どのようなタイミングで援助をおこなっているのかを把握することが可能でした。しかし、俯瞰して撮影しているため、保育者の個々の幼児やある群れ に対する援助のやり取り(特に会話)を十分に記録できないという課題がありました。

一方、これまでのビデオを用いた保育実践研究では、ある幼児の行動に着目し、その幼児の保育者や他児へのかかわりをズームして記録することが中心となっていました。焦点化されたある幼児の言動については詳しく分析できるかもしれませんが、その幼児の周辺にいて、直接かかわっていない保育者や他児との関係(互いに見合っている、互いの位置・身体の向きなど)が記録され難いので、その関係性を読み取ることが困難でした。むしろ集団保育におけるある幼児の言動は、この関係性のあり様に大きく左右されていることが考えられます。

この様な私と共同研究者(あかみ幼稚園の先生方)との研究課題、これまでの保育実践研究の課題について思案していたところ、偶然このビデオカメラに装着できるワイヤレスマイクを見つけ、実際のビデオ記録に試してみました。(担任保育者にワイヤレスマイクを付けさせていただきました。)  実際におこなってみると、俯瞰して撮影しながらも、今まで聞き取り難かった保育者の言葉やその周辺の幼児達の言葉がとてもクリアに聞き取れ、さらに記録されます。保育者の言葉やそこでの会話がより聞き取れるようになったことで、保育者のクラスの幼児達それぞれへの見取りや援助の意図が以前よりも把握しやすくなったことは確かです。

このワイヤレスマイク付きビデオを用いた実践研究の成果は、今年5月に開催された日本保育学会第66回大会の口頭発表(「製作コーナーを基盤にした遊び保育の実践(1) -4歳児保育における同調的な遊びから目的志向的な遊びへの発展に向けた援助-」)で報告させていただきました。

今年度の実践研究においても、このワイアレスマイク付きビデオを使って保育実践の観察および記録をおこなっていますが、俯瞰性と焦点化を併せ持つこの記録機器によって、少しでも集団保育での保育者の援助行為の特質が明らかになればと思っています。

来年度の日本保育学会第67回大会では、「ワイヤレイスマイク付きビデオを用いた保育実践研究の意義とその可能性」と題し、自主シンポジウムを開催させていただく予定です。この機器を使って保育の場でフィールド研究をおこなっている方々にご提案いただき、この記録方法の可能性や課題について検討します。ご関心のある方は、ぜひお越しいただき、ご意見等をいただければと思っています。

また、次回の「第5回 ワイヤレスマイク・ビデオ研究会(仮称)」においても、私の今年度のビデオ記録をもとに発表させていただく予定です。ご関心のある方はぜひご参加ください。

第5回  ワイヤレスマイク・ビデオ研究会
日    時:2013年10月25日(金) 18:30~
場    所:日本女子大学目白キャンパス 新泉山館6階 請川研究室
発表者:高橋健介(東洋大学)
テーマ :「製作コーナーを基盤にした4歳児保育の実践 -個々の作り見立てから協同的な遊びに
      向けた援助-(仮)」
連絡先:高橋健介 takahashi_k@toyo.jp

 「天高く馬肥ゆる秋」 あかみ幼稚園の運動会はもうすぐです。
 

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